般若心経について良くわかるはなし
『般若心経』のもととなった経典は『大般若経』と呼ばれるもので、全六百巻もある膨大な経典です。この『大般若経』には大乗仏教の基本哲学である「空(くう)」の思想が書かれています。「空」の思想とは私たちが持つ財産、地位、モノなどに対する“執着心”から解き放たれた自由な心の境地を指します。
我々が執着するモノは必ず変化し、滅するものです。そのようなはかないものに対して執着し、もがくところに苦しみの原因があると考え、その執着から離れて「空」の立場に立った時に人は完全なる自由を得、苦しみから脱却することができるのです。『般若心経』は、このように「空」を説く『大般若経』の神髄をわずか二百六十二文字に凝縮したお経です。「心経」は『大般若経』の神髄、真意という意味で、原典であるサンスクリット語では「フリダヤ・スートラ」といい、直訳すると「心臓である経典」となります。
現代の日本でも“お守りの経”として『般若心経』に対する根強い信仰が残っているルーツは、実は「西遊記」に見つけることができます。『般若心行』は何人かの中国の高僧によって漢訳されています。そのうちの一人が「西遊記」で有名な三蔵法師・玄奘(げんじょう)です。西遊記のなかで、たくさんの魔物が出てきますが、この魔物を撃退する切り札に『般若心経』が使われます。危機に対して玄奘ははじめ様々なお経を唱えてみましたが、いっこうに効果がありませんでした。そこで『般若心経』を唱えたところ、その効果は絶大だったといいます。玄奘は生涯この『般若心経』を心の拠り所としました。ただ、『般若心経』を厄除けに用いたのは玄奘が初めてではありません。三世紀ごろに中国に伝わったこのお経は、七世紀の玄奘の時代にすでに厄除けのお経として広く伝わっていたとされています。
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